「食べる」も「旅行」もあきらめない介護とは?

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介護される人が最期まで楽しみにできる食事。衰えとともに上手に食べられなくなったり誤嚥が怖くなったりして、小さく刻んだりミル食などに変わっていきますが、なるべくそのまま食事を摂ってほしいものです。その一方で介護・医療従事者の勧めで、胃瘻や経鼻経管栄養(鼻腔栄養)、IVH(中心静脈栄養法)など、食事とはほど遠い行いを選択してしまうケースもあります。介護される人にとって食事とは何か。特定非営利活動法人つどい場さくらちゃん理事長・丸尾多重子さんとともに考えてみたいと思います。

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ミル食の人が急に肉を食べ出した、毎年恒例の台湾「車いすツアー」

つどい場さくらちゃんが主催する毎年恒例の車いすツアー。今年も30名を超える人たちが台湾旅行を楽しみました。毎年参加されている介護を始めて24年という参加者さんの旦那さんは、半年前から飲み込む力が落ち、家ではミル食にしていたそう。それが飛行機に乗った途端、生のレタスをむせることなく食べ、肉じゃがも食べたというから驚きです。ホテルでもスペアリブにかぶりつき、春巻きもパクパク。家に帰って食事をするとむせるというから「本当に不思議でたまらない」といいます。

旅先でごはんを刻むために持参したハサミやすり鉢も、ほとんど必要なかったそう。つどい場さくらちゃん・理事長の丸尾多重子さんは「びっくりしたけど、これが現実。朝はバイキングでハムも麺類も飲み物もたくさん目の前に並んで、わくわくした表情が伝わってきます。やっぱり心が動くと体が動くんですね」と楽しむことが何よりのリハビリになると話してくれました。

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最期までおいしいものを、気ままに人間らしく食べ続けたい

私の祖母は「もって3日」と言われて介護老人保健施設から引き取り、在宅になってから5年ほど生きました。その間の食事は経腸栄養剤を口から摂り、ときどきプリンを食べていました。家のおかずや、せめて出汁でも餡にして食べさせたいと思いましたが「胃瘻は絶対嫌だけど、バランス良く栄養を摂って、脳卒中など起こさないようにしたい」と母親は気をつけていました。これ以上不自由にならないようにと食事制限や栄養管理に気を遣ってしまうのも現実。母親も好きなものを好きなように食べてほしい気持ちがあっただけに、もどかしかったと思います。

だんだんと食べる力を失い、1日3度の食事も次第に減っていきましたが、それも自然な老い方といいます。決まった時間に全量摂取するよりも、食事くらい気ままに摂って構わないのではないでしょうか。つどい場さくらちゃんの利用者だった99歳のおばあさんは、チーズやピザ、お肉が好きで、最期はミル食でしたが亡くなるその日まで食事をしていたそう。「水はむせるのにビールならむせない。ある時に仕方なくランチパックを食べさせたら、手づかみでバクバク食べた。やっぱり普通のものが食べたいよね」というのも心温まる微笑ましいエピソードです。

介護が重くなっても街へ出る。それが介護の社会を変え、私たちの日々の幸せにつながる。

丸尾さんは「介護は生やさしいことばかりではありませんが、みんなでやれば楽しくできることも増えていく。介護される人が外に出ると町も社会も変わっていく」といいます。家の中や施設で過ごすのではなく、手づかみでもいいからレストランで食事をしたり、車いすでも旅行を楽しんだり。それだけで介護される人は笑って暮らせるのです。

つどい場さくらちゃんの「車いすツアー」は、北海道旅行を皮切りに今では台湾旅行も含め計14回実施。台湾には車いす専用の観光バスがあり、日本と違って快適だそう。介護職の人が参加するだけでなく、参加者同士も支え合えるので心から旅行を楽しむことができます。認知症の家族を外へ連れ出して、久しぶりに昔の笑顔が見られたら、きっとあなたの日々の苦労も飛んでいく。そんな瞬間を一つひとつ積み重ねていきましょう。

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