【実話】後悔しない介護を考える〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録⑤〜

image1

認知症が進むにつれ本人にできることが少なくなり、ついつい全てのことを介護する側がやってしまう。
これでは介護されている人も不安な気持ちが増してしまったり、苛立ってしまいトラブルのもとになることが多いものです。
たしかにデイサービスや病院などへ行くために急いでいるときもありますが、なるべく本人のペースを見守ってあげたいところ。そこで改めて考えたいのが「待つ力」です。
特定非営利活動法人つどい場さくらちゃん理事長・丸尾多重子さんとともに読み解いていきたいと思います。

【実話】介護する人と介護される人のキモチをつなぐ考え方 〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録①〜
【実話】介護する人と介護される人のキモチをつなぐ考え方 〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録②〜
【実話】介護する人と介護される人のキモチをつなぐ考え方 〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録③〜
【実話】後悔しない介護を考える〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録④〜
【実話】後悔しない介護を考える〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録⑤〜

食後はケンカの時間だった

私たち家族は、認知症の祖母を長く自宅で介護をしていました。次第にできないことが増えていく祖母が、自宅にいた頃に最後まで手伝っていた家事が食後の皿洗いでした。
最後の3年くらいは同じことの繰り返しだったように思いますが、大抵は洗剤を使わずスポンジで水洗い。ときどき母が「おばあちゃん、洗剤!」というと「皿を洗う、洗わない」でケンカの始まりです。毎食のことですから、さすがに母も苛立ってしまい、祖母ではなく母自身が皿洗いをしてしまうことが増えるようになっていったと思います。

ときどき気づいたときは私が「おばあちゃん、洗剤忘れてるんちゃう?」とそっと声をかけると「あぁ、ほんまや忘れてた」と答える祖母。
孫に声をかけられたということもあるかもしれませんが、声のかけ方ひとつで“食後の大暴れ”を回避することができるのは、私自身ホッとしていた記憶があります。

image2

認知症の人は、いつも不安な気持ちを抱えている

「認知症になったら何も分からへんと思われがちですけど、全然そんなことないですよ。次第に忘れる頻度が増えていくわけで、自分が壊れていくのは全部わかっているはず。
そんな自分が怖くて、認知症の人は不安になって孤独を感じてしまうと思います」と丸尾さんはいいます。また「家族や周りのお世話する人が“この人はもう何もできない”と決めてしまって、まだ見守ってあげたり、少し手伝ってあげたら出来ることまで取り上げようとすると、不安な気持ちがもっと大きくなりますよね。そしたら感情の行き場がなくなって、暴れてしまう。

そりゃ介護してたら腹も立ってしまうから、大いにケンカするときがあっても良いんですけどね…」と、介護する人は“待つ力”を身につけることが大切なようです。認知症は忘れるばかりでなく、極々たまに思い出すことだってあります。
新しいことが覚えられないだけと理解して、なるべく見届ける力を身につけたいものです。

介護する人の“待つ力”で乗り越えられること

認知症になっても最後まで残ることは「食事」・「排泄」・「移動」。
この3つをできるだけ尊重して介護することが大切だといいます。認知症が進むと自分の便を壁や床にこすりつけてしまう弄便行為がきっかけで在宅介護をあきらめてしまうケースもありますが、実は対処のタイミングで改善するかもしれません。

「オムツの中に便が溜まってしまったら、そりゃ不快でしょ。それをうまく伝えられなくて、便を手で触ってしまう。排便だけは介助して、ポータブルトイレでさせてあげたら、この行為はおさまることありますよ」と丸尾さん。いま一度“待つ力”を意識することで乗り越えられる課題があるのかもしれません。
どうしても在宅で介護できないこともあると思います。そんなときは民家のような建物を使って預かる施設「宅老所」もひとつの選択肢。介護保険制度では補えない部分にも独自のサービスを提供する場合もあるそうです。「慣れ親しんだ家のようなところで、ゆっくり老いを待つ。そんな施設なら心が救われますね」。待つ力は介護だけでなく、施設のあり方をも変えていくのではないでしょうか。

【実話】介護する人と介護される人のキモチをつなぐ考え方 〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録①〜
【実話】介護する人と介護される人のキモチをつなぐ考え方 〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録②〜
【実話】介護する人と介護される人のキモチをつなぐ考え方 〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録③〜
【実話】後悔しない介護を考える〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録④〜
【実話】後悔しない介護を考える〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録⑤〜

<丸尾多重子さん プロフィール>
「介護する人、される人の垣根を越えて、みんながまじくる(交わる)場が大切です」
特定非営利活動法人つどい場さくらちゃん理事長。兵庫県西宮市で「つどい場さくらちゃん」を運営。介護する人と介護される人が集い、一緒に昼食をしたりお茶をしたりするなかで、情報交換する場を作っている。講演やテレビ・ラジオ・新聞など出演多数。『心がすっと軽くなる ボケた家族の愛しかた』(高橋書店)、『ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!』(ブックマン社)など著書多数。
つどい場さくらちゃんウェブサイト:
http://www.geocities.jp/tsudoiba_sakurachan
関連記事
「食べる」も「旅行」もあきらめない介護とは?
おむつ選びナビ①身体機能に合わせた排泄アウター選び3つのポイント
【実例紹介】尿モレの多い寝たきり男性が、紙おむつを使わなくなるまで。