【実話】後悔しない介護を考える〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録4〜

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家族の介護に明け暮れる日々。「介護している間に自分の人生はどこへ行ってしまったんだろう」と悩んでしまう人も多いものです。そんな経験があるせいか、「本当は家で最期をむかえたいけど、家族に迷惑をかけたくないから施設か病院で…」という声もよく聞くようになりました。いわゆる核家族社会のなかで「家族に迷惑をかけたくない」という気持ちが、家族の絆にマイナスな影響を与える場合もあるのではないでしょうか。家で看取るという大切な経験から得られる人間らしい豊かさについて、特定非営利活動法人つどい場さくらちゃん理事長・丸尾多重子さんとともに読み解いていきたいと思います。

【実話】介護する人と介護される人のキモチをつなぐ考え方 〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録①〜
【実話】介護する人と介護される人のキモチをつなぐ考え方 〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録②〜
【実話】介護する人と介護される人のキモチをつなぐ考え方 〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録③〜
【実話】後悔しない介護を考える〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録④〜

「移動する自由」もないという介護でいいの?

私の母は小さな頃から少し苦労をして育ち、若いうちに家を出て働いたと聞いています。年老いて仲良くなったようですが、きっと当時の祖父母の夫婦仲が良くなかったのでしょう。そんな母も父と平凡な幸せがある家庭を持ち、数年も経たないうちに祖母の健康面で同居するようになったそうです。

そんな中、祖父母の終末期には14年の介護生活が待っていました。もしかすると介護生活の中で「自分の理想」とは遠い人生だったのかもしれません。介護施設に入所してからも動き回ったり、引っ掻いたりするようなことが多かったそうです。

そんな行動のせいか日中から睡眠薬などを処方されていたのでしょう。低下した身体機能で歩けば転倒もしますし、ベッドから落ちて骨折することもありました。そのうち拘束ベルトを付けられベッドに寝たきりになってしまいました。施設から引き取り自宅で介護を始めるころには、祖母の身体はねじ曲がっていました。

なぜ人間の尊厳にも関わるような「移動する自由」も許されない施設環境で人は生きていかなくてはならないのでしょうか。そんな疑問を私は持っていました。

 後悔や無念さが残った介護生活

丸尾さんは、ご両親とお兄さんの家族3人を介護し看取ってきたといいます。「私もあなたのお母さんのように突然自分にふりかかってきた介護生活。世間から取り残されたような気持ちになるし、泣いた日もありましたよ。自分の介護が正しいかどうか不安でしたしね。まだ当時は誰も教えてくれませんでしたから。気づいたころにはもう、疲れて心も身体もボロボロです」。

介護生活が終わったときに「自分の中に後悔がありました」と丸尾さんは言います。そんなときにヘルパーの講座を受け、介護施設で研修を受けたときに衝撃的な光景を目の当たりにし、つどい場さくらちゃんの開設を決めたそうです。

「ほとんどの人が車いすで生活をしていて、無表情でね。ボーッとして会話もないような現場でした。必要以上に処方した薬でおとなしくさせていたんやと思います。入浴介助の実習のときに私は機械入浴を見て言葉を失いましたよ。

顔を引きつらせて泣き叫ぶお年寄りの服を無理矢理脱がせてね。施設の人は長靴に前掛けしてホースでジャーッとお湯をかけるんです。魚屋ちゃうねんから。ほんまに腹立ってねぇ」。
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人生の物語に気づくことで介護は変わる

かつて、施設で杖を振り回すお年寄りが、つどい場にくると大人しく昼食を食べて帰るという利用者がいたそうです。「たまたま話していて分かったことなんですけど、その人は会社員のころに労働組合をしていて、旗を振り回していたそうなんです。つまりね、その頃の行動が認知症になって現れているだけだと思うんです。でもね、施設の人は怖がって部屋に閉じ込めて近づかない。うちにいるときはごはん3杯くらい食べて帰りましたよ」。

丸尾さんは、ビジネス化した介護に警鐘を鳴らしています。「介護保険を使って企業や施設にお世話を任せるようになったでしょう。本質はそうではないはず。地域でお年寄りをみるためだったと思うんです。あぁ、この人の人生にはこんな物語があったんやなぁと気づく喜びも介護の楽しみなんよ」。

辛く悲しいこともある介護ですが、その時間は、改めて家族を想う人生の大切な期間なのかもしれません。

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〈丸尾多重子さん プロフィール〉
「介護する人、される人の垣根を越えて、みんながまじくる(交わる)場が大切です」
特定非営利活動法人つどい場さくらちゃん理事長 丸尾多重子さん
兵庫県西宮市で「つどい場さくらちゃん」を運営。
介護する人と介護される人が集い、一緒に昼食をしたりお茶をしたりするなかで、情報交換する場を作っている。講演やテレビ・ラジオ・新聞など出演多数。
『心がすっと軽くなる ボケた家族の愛しかた』(高橋書店)、『ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!』(ブックマン社)など著書多数。