介護のためのおむつのヒント

排泄の基礎知識(排便編③):スムーズな排便のために

人間の身体の構造を見てみると、便や尿をスムーズに排出するためには、座った姿勢が最適となります。寝た状態では排泄しにくい状態であるといえます。寝たきりの方の排泄ケアを行う場合には、身体を起こすといいでしょう。

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シチュエーション別に考える排泄ケアのあれこれ

寝た状態と座った状態では、排泄ケアの方法も変わってきます。また、高齢者に多い排泄トラブルなど、事前に知っておくと介護時の対応につながることもありますので、この機会にぜひチェックしましょう。

寝た状態での排泄

  • 排尿

尿道は上向きとなり、腹圧をかけて尿を排出する必要があります。したがって、筋力が弱ければ残尿状態になったり、排尿しづらくなったりします。

  • 排便

直腸と肛門の角度が90°±10°となり、腹圧で便を押し上げて排出する必要があります。したがって、筋力が弱ければ残便状態や便秘になります。

排便姿勢

座った状態での排泄

  • 排尿

尿道が下向きとなるため、尿は重力に従って下に落ちます。したがって、筋力が弱くても尿は出やすくなります。

  • 排便

直腸と肛門の角度が130°±15°となり、角度が広がるので重力に従って出やすくなります。したがって、筋肉が弱くても重力が働いて排便しやすくなります。身体を少し前にかがめた姿勢がベストポジションです。

排便姿勢2

高齢者に多い排便トラブル

慢性の便秘

食事の量が少なかったり、長時間寝たきりが続いたりすると、大腸の運動が低下します。大腸内に便が留まる時間が長くなり、便が固く太くなって排便しにくくなります。

便失禁

加齢や障害によって神経・筋活動が低下すると、寝た姿勢でも、直腸―肛門角が開いている状態になるので常時失禁している状態(ダラダラ便)になることがあります。

排便トラブル解消のために心がけたいこと

①食事 野菜や果物、繊維質の多い食事とたっぷりの水分を摂ります。朝食前に冷たい水を飲んで大腸を刺激するのも、ひとつの方法です。

②運動 身体を動かして腸の運動を高めます。寝たきりの場合は腹部マッサージやギャッチアップ(ベッドの背もたれを上げること)などで身体を動かします。

下剤を使うその前に・・・

排便の周期には個人差があることに留意しましょう。排便姿勢や生活習慣の見直しで便秘が解消されるケースもあります。そういった理由で、最近では排便のケアに下剤を使わないケースも増えてきました。

下剤を使わなければ便秘が解消されない場合、服用する量や期間に注意しましょう。下剤には、大腸内の便をやわらかくするものと、大腸を刺激して腸の運動を高めるものがあり、後者は習慣性になる場合があります。

まとめ

寝た状態と座った状態で、排泄ケアの対応方法は変わってきます。寝た状態では、体の角度の問題により、腹圧で尿や便を排出する必要があります。座った状態では、重力が働くので、筋力がなくても尿や便を排出することができます。慢性便秘や便失禁が高齢者に多いことも知っておきましょう。排便トラブルの改善法としては、食事で繊維質や水分をしっかり摂ることと、腸の運動を高めることです。便秘の際、下剤を使う場合は、服用する量と期間には注意しましょう。