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【医師監修】排泄の基礎知識(排尿編③):排尿障害のタイプと対策

失禁をはじめとする排尿のトラブルには、さまざまなタイプがあります。また、その症状には個人差があり、同じ症状でも原因が異なる場合もあります。ひとりひとりに合った排泄ケアを提案することが重要です。
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排尿障害とは一体どんなもの?

「尿がモレる」「尿が近い」「尿が出にくい」など、排尿に関するトラブルを排尿障害といいます。

症状によっては、日常の心がけで改善するものもあれば、しっかりと病院での治療を行わなければならないものもあります。正しい対処で快適に過ごすためには、正しい知識を知って、できることからはじめて、必要な時は自分で判断せず、専門医の診断を受けましょう。

排尿障害には、具体的にどんなものがあるのでしょうか?「尿がモレる(尿失禁)」「尿が近い(頻尿)」「尿が出にくい(排尿困難)」について説明します。

尿失禁(尿モレ)の種類について

自分の意志とは関係なく尿がモレてしまう排尿障害を「尿失禁」といいます。尿失禁は、その症状により以下のように分類されます。その症状と解決策を見てみましょう。

腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)
【症状】咳やくしゃみ、走ったり跳んだりなど、お腹に力を入れた時にモレてしまいます。(出産を経験した中高年の女性に多い。)

【解決策】体操で骨盤底筋群を鍛えます。便通を整えます。太りすぎないようにします。

切迫性尿失禁(せっぱくせいにょうしっきん)
【症状】尿意を感じると我慢できずにモレてしまいます。(トイレの回数が増え、モレやすい。)

【解決策】過活動膀胱※や脳血管障害、膀胱炎など、原因となる病気の治療と薬物療法。排尿を我慢する訓練で膀胱を大きくします。体操で骨盤底筋群を鍛えます。便通を整えます。生活環境を見直します(バリアフリー化・福祉用具の活用)。

※過活動膀胱:尿が十分に溜まっていない状況で膀胱が収縮してしまいます。帰宅時やトイレのドアに手を触れたときなどに突然、強い尿意が襲ってきて、急いでトイレに駆け込もうと思っても間に合わずにモレてしまいます。過活動膀胱は適切な治療をすることで症状を軽減することができますので、ぜひ泌尿器科を受診してください。

溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)
【症状】尿が出にくく、残った尿がじわじわモレてしまいます。(尿が近い、尿をモラすととらえられることが多いのですが、実態は尿が出にくいのです)

【解決策】前立腺肥大や糖尿病など、原因となる病気の治療。カテーテル(管)を使って尿を出すなどして、残尿をなくします。

機能性尿失禁(きのうせいにょうしっきん)
【症状】トイレがわからない、トイレまで行けない、下着の処理ができないなど、生活環境や運動機能に問題があり、排泄動作が間に合わなくなります。

【解決策】原因となる病気の治療や生活環境を見直します(バリアフリー化・福祉用具の活用)。

夜尿症(やにょうしょう)
【症状】夜、睡眠中に尿がモレてしまいます。(子供の場合、精神の未発達など、成人の場合、膀胱の異常収縮などが原因。)

【解決策】生活指導、行動療法(アラーム治療)、薬物療法などがあります。

 「尿失禁」以外の排尿障害とは

尿失禁の他にも、いくつか排尿障害はあります。「尿が近い(頻尿)」「尿が出にくい(排尿困難)」について説明します。トラブルが起きた時に対応できるよう、症状と解決策を把握しておきましょう。

尿が近い(頻尿(ひんにょう))
【症状】トイレに行く回数が多い。日中8回以上、夜間1回以上。夜間に何度もトイレに行くことを夜間頻尿と言います。尿がたくさんつくられる(多尿:1日尿量2000ml以上)、膀胱に尿が貯められない(膀胱容量の減少)、排尿後も尿が残る(残尿)などが原因になります。

【解決策】排尿日誌で排尿があった時刻と排尿量を記録します。飲水量も記録できれば水分の取りすぎがないか判断できます。排尿後に下腹部の膀胱あたりを押さえることで、ある程度残尿の有無を知ることができます。これらの原因の違いによって、水分摂取を控えたり、排尿がまん訓練をしたり、薬物でコントロールすることもできます。

尿が出にくい(排尿困難(はいにょうこんなん))
【症状】尿が出にくく、排尿が途切れたり、時間がかかったりします。

【解決策】排尿困難の原因には、前立腺肥大症や便秘による尿道の圧迫、尿道が狭い(尿道狭窄)、膀胱に力がない(神経因性膀胱など)ことがあります。原因の治療をおこないますが、自己導尿(自分でカテーテルで尿を出す方法)も必要なことがあります。

まとめ

排尿に関するトラブルを排尿障害といいます。尿がモレてしまう「尿失禁」をはじめ、尿が出にくい「排尿障害」、膀胱機能にトラブルが出る「神経因性膀胱」、トイレの回数が増える「頻尿」など、さまざまな排尿障害があります。それぞれの症状と解決策を知っておくことが、快適な介護につながります。

記事監修:医療法人 恵友会 恵友病院 泌尿器科医 小川隆敏先生