【町づくり】住民とひとつになって、町のお年寄りを支える仕組みはつくれる。

大阪府東南部に位置する太子町は、人口が約13,500人、4×4km四方の小さな町。豊かな緑と歴史に育まれた町の高齢化率は27%程度で、要介護認定率は府内で2番目に低い状況です。都市部と同様に独居老人や老老介護もありますが、総合福祉センターには1日40人程度のお年寄りが集まり、さまざまなサービスを受け、元気に活き活きと過ごしています。地域包括ケアシステムという制度と向き合いながら、町民の皆さんとともに町づくりに取り組む社会福祉法人太子町社会福祉協議会にお話を伺いました。

住民との会話をていねいに重ね、高齢者向けサービスを開発。

町の端から端までが車で15分というコンパクトな町でも、お年寄りの買い物支援はニーズの高いサービス。マイクロバスでお年寄りを連れて買い物へ行くほか、毎週月曜に総合福祉センターへ“コープのお買物便”に来てもらうなどの工夫を重ねています。総務係長の貝長さんは「今後は地区の集会所などに回れるようにしたい」と考えており、さらに「太子町は買い物する場所がないわけではないが、生鮮・薬・服などを一緒に買えるような店が近くにないのが悩み」といいます。

町のいろいろな声を吸い上げられる理由として、「各地区や自治会を行政の職員とともに巡回を重ね、住民さんとのコミュニケーションを大切にしています。その上で高齢者向けサービスを開発しているからでしょうか。住民が思い描いている太子町の未来像を、行政に伝えていくことが欠かせません」と話してくれました。

コープのお買物便

コーヒーマシンの研修もある、お年寄りだけで運営するカフェ。

館内ではパンの販売も
2016年10月から始めた画期的なサービスが、総合福祉センター内にあるカフェ。お年寄りの方が店員にもお客さんにもなれるのが特徴で、いまではお年寄りたちで運営しています。毎月ミーティングを重ね、売上やオペレーションの注意点なども共有している姿は、まさに仕事のような光景。クオリティーにもこだわり、店員を希望される人は必ず、コーヒーマシンの使い方について研修を受けるほど本格的なもの。膝の良くない人は経理を担当したり、それぞれの出来る範囲や得意を活かす役割分担をしています。

「役割があることで、お年寄りの表情が輝いて見える」と貝長さん。「高齢者向けサービスは、意欲あるボランティアさんだけに頼っていては長続きしません。サービスを立ち上げた後、時間の経過とともに自然と住民の方にも担ってもらえるようにしたいです。それには私たちも住民さんと一緒にサービスを育てていくことが肝心。住民・行政・社協がひとつになれる環境づくりを心がけたい」と行政に丸投げしない姿勢を大切にされています。

お年寄りだけで運営するカフェお年寄りだけで運営するカフェ2

 10年先を見据えて住民や行政と福祉・健康の町をつくる

太子町の大きな4つの課題は「移動支援」、「集いの場・交流」、「買い物支援・生活支援」、「隣近所・町会の活性化」。これは住民とのワークショップのなかで「近い将来にあったらいい行政サービス、地域のたすけあい」だそう。サービスを開発する上で最も大切なことは「なぜ利用したいのかを追求すること。これができていないと行政が陥りやすい“誰も利用しないもの”になってしまう」といいます。

住民が主体となった地域づくりを推進する上で大きな役割を果たしているのが協議体『SASAE愛太子 (ささえあいたいし)』。開催回数37回、参加人数延べ700名の勉強会から発足した協議体が、魅力ある地域づくりに貢献するべく住民の手で企画立案しています。この町は古くから住む人と、高度成長の頃に転入してきた方が上手に融合しているのも大きな特徴。「これからの新たな担い手候補は、中学生や高校生」という貝長さん。「地域包括ケアシステムという制度は、長期的視点にたって進めていく時間のかかるもの。10年先を見据えて住民さんや行政と一緒に、福祉・健康の町をつくれる自信があります」と、新しく始まった介護予防・日常生活支援総合事業に力強く取り組む大阪の小さな町から目が離せません。このような町で暮らすことを選択するのも、超高齢社会のひとつのヒントかもしれません。
椅子を使った運動で健康促進認知症の予防に麻雀カラオケ大会でリフレッシュ

社会福祉法人太子町社会福祉協議会
貝長誉之さん

2貝長誉之さん

社会福祉法人太子町社会福祉協議会総務係長。コミュニティーソーシャルワーカーとして地域の福祉に取り組んだ経験を活かし、ていねいに町を巡回するスタイルで太子町のまちづくりに取り組んでいる。
第1層生活支援コーディネーター。

 
 

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