介護のためのおむつのヒント

【事例紹介】紙パンツが恥ずかしい!布製のアウターで自信を取り戻した男性の話

おむつは、単なる消耗品ではなく、ご本人にあった使い方ができれば安心をもたらすものであり、また間違った使い方をしてしまうとご本人の身体を損なうものでもあります。
おむつの形態の選択は、介護に関わる方の暮らしを左右すると言っても過言ではありません。

排泄アウター(外側のおむつ)には、布製と紙製があり、排泄インナー(尿とりパッド)を固定するものです。パンツ型(リハビリパンツ)の大人用紙おむつは布製のアウター(外側のおむつ)に比べ、取り替えなどの面では使いやすくて便利で介護負担の軽減にもつながります。しかし、すべての人にとってパンツ型の大人用紙おむつがベストかというと、そうでもありません。

今回は、パーキンソン病でおむつを利用する男性が、おむつの形態を変えたことで悩みを解決できた成功事例をご紹介します。

突然のパーキンソン病の診断

会社勤めをしていた58歳男性、ある日自分の体調の異変に気づき病院で受診したところ、パーキンソン病の診断を受けました。症状が悪化すると「会社に迷惑をかけられない」と退職する人が少なくないといいますが、この男性も診断を下された後、体調のことで仕事に影響が出る前にと自主退職を決め、早期退職をしてからはご自宅で過ごされていました。

パーキンソン病の診断を受けてからの生活

パーキンソン病といえば、手が震えたり、動きが素早くできなくなったり、筋肉がこわばりうまく動くことができないといった症状などがあります。普段薬が効いている時は、運動機能に問題がなく車の運転や自転車に乗ることもできるようですが、薬の効果が薄くなると次第に効果が弱まっていき動きにくくなります。

そうなると歩行もままならない状況になります。さらに夜間はほとんど薬が効いていないので自分だけでは動きにくく、体をひねる動作が行いにくくなり妻の介助によって寝返りをしていたそうです。

プールに行かなくなった理由は、病気による身体の問題だけではなかった

妻から「今まで一緒にプールに行っていたのに、最近は行かなくなったので気になっている。夫に聞いても曖昧な返事で答えてくれない」と相談がありました。この男性にご自身の思いを聞かせていただいても、妻の前では曖昧な答えしか返ってきません。そのため、男性の書斎にて二人で話をしたところ、少し本音を話してくれました。

「今まで趣味だったプールに行ったときに自分の紙おむつ姿を見られたくない。自分は薬が効いている間だと体は自由に動けるが、一旦切れてしまうと身体の自由が効かなくなる。プールに入る時はズボンと一緒にパンツ型紙おむつを脱ぐ。でも、帰る時になって、薬の効果が薄くなってくると身体が動きにくくなり、ズボンと一緒にパンツ型紙おむつを履こうとしてもうまく履けなかった時があった。」ご本人から話を聞かせて頂く事によって本当の理由がわかったのです。

趣味のプールに行かなくなった原因は、パーキンソン病による身体の動きの問題だけでなく、更衣の時にパンツ型紙おむつを見られたくない自尊心の問題だということがわかりました。

介護用の大人用紙おむつを使い始めた男性。当たり前ではありますがおむつは下着ですので、銭湯や温泉、プールに行った時には脱衣所では衣類と同じように目に触れる事になります。

あなたがもし介護用の紙おむつを履いていたら、脱衣所でどんな気持ちになるでしょうか? 自分に置き換えて想像してみてください。人目を気にせずに衣服を脱ぐことができるでしょうか?

下着に近い感覚の「布製のアウター」を提案

そんな時にご提案したのが布製のアウターです。見た目は普段履いている下着に近い感じで、人前で脱いでもあまり気にしなくていいデザインと言えます。その布製のアウターとその時に応じたサイズの尿取りパッドを組み合わせることで、日中も夜間も使い勝手が良くなりました。

【布製アウターのメリット】
・下着らしく身に着ける事ができる
・洗濯して何度も使用できる
・紙おむつに比べると経済的
・伸縮性が高いものが多く尿とりパッドをしっかり固定できる
・足回りのフィット感、履き心地が良い
・紙おむつに比べて通気性がよく肌触りが良い
・紙おむつを嫌がる方におすすめできる

おむつの組み合わせ例

昼間は2~3回分の吸収量のパッドで、夜は6回分くらいの多めの吸収量の夜用パッドで提案してみました。もちろん本人の状態によって尿パッドの大きさや吸収量など調整が必要になります。

パンツ型紙おむつから布製のアウターに変えたことで、この男性はプールだけでなく、パーキンソン病になってから行かなくなった温泉や長時間のドライブなど、妻と二人で出かけるようになったそうです。

まとめ

大人用紙おむつの選び方は簡単なものではありません。紙おむつに固執することなく、布製のアウターを取り入れるなど、柔軟な発想がよりよい生活につながることもあります。おむつを使用する人に身をおいてみることが肝心です。何歳になっても自尊心や羞恥心を持っている事を忘れないでその人に合ったおむつの形態について、一度考えてみてはいかがでしょうか?