介護のためのおむつのヒント

紙おむつの構造や素材を正しく理解したら、モレが減るって本当?

「おむつの構造や素材を正しく理解することと、モレが減ることって関係があるの?」と疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?でも、それって本当なんです!その理由は、おむつの構造や素材を理解することで、もともと紙おむつの素材に備わっている性能を活かして使えるからです。

まずは、おむつの基本構造を理解しよう!

おむつは、各メーカーの開発者が、尿や便のモレ防止、排尿後の快適性、運動機能、取り扱いやすさなどをいろいろと考えて設計しています。

実際の構造は、メーカーの創意工夫により異なりますが、代表的なテープ型の紙おむつ構造と、各部位の役割、材質はおおよそ次の通りです。

おむつの構造
出典:一般社団法人 日本衛生材料工業連合会ホームページ

断面図を見ると、さまざまな素材がサンドイッチのように重なっていることが分かります。おむつの基本機能は排泄物を吸収し、衣類や周囲を汚さないことなので、吸水材が要です。

吸水材は、吸収紙、綿状パルプ、高分子吸水材などの組み合わせで構成されています。尿を吸収しやすく、一度吸収したら確実に取り込んで後戻りをさせない工夫がされています。

そして、左右についている立体ギャザーが、流れてきた尿をせき止める防波堤の役割をして横モレを防止します。

紙おむつはそれぞれの素材の特性を活かしてモレを防ぐ

では、次にそれぞれの素材を説明していきましょう。紙おむつの素材は一つひとつ特性が違いますが、それを活かし、しっかり尿を吸収することで、おむつの外にもらしません。

それらがサンドイッチのように重なることで相乗効果を発揮します。例えるなら、複数の楽器が集まって音楽を演奏するオーケストラのようなものですね。では、具体的にどんな素材でできているかご紹介しましょう。

不織布(撥水性・親水性)

紙おむつは、主に不織布という素材で作られています。「織らない布」と書いて不織布(ふしょくふ)と言います。“お茶パック”や“お手ふき”などでおなじみの素材です。立体ギャザーと表面材の両方に使われていて、見た目はよく似ていますが、性質には大きな違いがあります。

立体ギャザーに使う不織布は、撥水性の素材が使われています。撥水加工の不織布は水をはじいて水滴にして流し、下に通しにくいと言う特徴があります(例:レインコート)。水をはじくので、流れてきた尿をせき止める防波堤の役割をします。撥水性不織布と伸縮素材が合わさって、立体ギャザーになります。

表面材に使っている不織布は親水処理を行い、水を通す性質にしています。通常の紙や布と比較して尿などを速やかに吸収材に落とし、逆戻りさせにくい効果があります。柔らかい風合いで、ご使用者のお肌をいたわります。

綿状パルプ

尿を素早く吸収して、ひろげるスポンジのような仕事をしています。厚紙を綿状に粉砕したもので、実は紙おむつの本当の『紙』の部分なのです。尿をキャッチしたら、高分子吸水材(ポリマー)に尿を渡します。

高分子吸水材(ポリマー)

尿を吸収して、ゼリー状に固める大事な仕事をしています。自重の数十倍の尿をため込む保水力が自慢です。はじめはサラサラの粉ですが、水を含むとゼリー状になり尿を閉じ込めます。そのため逆戻りが少なく、布おむつに比べて表面はサラサラです。綿状パルプと協力して尿を吸収します。

吸収紙

綿状パルプと高分子吸水材が外にこぼれないように覆う役割をしています。

伸縮材

横モレ防止の立体ギャザーやパンツタイプのお腹まわりに使われている素材です。ストッキングと同じ伸縮糸で、『デニール』という単位で太さを表します。天然ゴムと違って、お肌に優しいフィット感を保ちます。

防水材

紙おむつの外側を覆う防水シートです。おむつ内の湿度を下げ、おむつ使用による肌あれのリスクを軽減するために、水分を通さない透湿性のものが採用されることもあります。

防水材があるから重ねても「吸収力の足し算」にはならない

一般的に紙おむつは、吸収体で吸収した尿が紙おむつの外にモレ出さないように防水フィルムを最下層においています。そのため、パッドを何枚も重ねても、純粋な吸収力アップにはつながりません。

しかも、パッドを重ねて使うとすきまができて尿がモレ出たり、外側のおむつの立体ギャザーがうまく働かずに尿があふれ出たりして、かえってモレがひどくなることもあります。何枚も重ねて使うのはモレ防止に逆効果なのでやめましょう。

おむつの構造や素材を活かすために気をつけたい使い方

その他にも、おむつの使用時に注意しておきたいポイントが2つあります。

  • パッドをひろげるとき、縦に振ってない?

おむつの要の吸水材は、綿状パルプと高分子吸水材(ポリマー)を吸水紙で包んでいます。高分子吸水材(ポリマー)は、はじめはサラサラの粉なので、パッドをひろげるとき縦に振ってしまうと、高分子吸水材(ポリマー)が偏ってしまい、吸収体が崩れてしまいます。吸収性能を活かすためにも、パッドは振らずに静かに広げて使いましょう。

  • 立体ギャザーは立てて使っている?

立体ギャザーが、流れてきた尿をせき止める防波堤の役割をして横モレを防止します。もしその立体ギャザーが内側に寝たままになっていたら、尿が外に流れ出る危険があります。横からモレないように立体ギャザーがついているものはしっかり立てて、そけい部に沿わせるようにしてあてると、モレにくく効果的です!パッドの端と端を持って引っ張ると、伸縮材のおかげで自然に立ってきますので、ぜひお試しください。

まとめ

おむつの構造や素材を理解することで、もともと紙おむつに備わっている性能を引き出した使い方ができます。正しく理解するだけで、モレが減るだけでなくコストがかからずとってもお得。おむつの基本機能は排泄物を吸収し、衣類や周囲を汚さないことですが、素材や構造にどのような工夫がされているのかをよく理解して、性能を活かして使ってくださいね。

参考:監修・執筆 浜田きよこ 「おむつ検定Rテキスト」(2017)  
発行:株式会社はいせつ総合研究所 むつき庵

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