介護の専門家に聞く!今知っておきたい介護ニュース その① 「診療報酬改定」

少子化・高齢化がますます進展し、厳しい財政事情の下で社会保障制度改革が進められる中、介護保険制度は医療保険制度を巻き込み、大きく変化・変容することが見込まれます。すでに、平成30年度からの第7期の介護保険制度改正に向けて、議論が始まっています。制度がどのような方向に向かうのか、最新のニュースに基づき、白鷗大学教育学部川瀬善美教授に今知っておきたい介護ニュースを解説していただきます。

出典:シルバー産業新聞
診療報酬改定~在宅編~ 退院・在宅移行充実

※最新ニュースは、シルバー産業新聞掲載記事を基に、同社の許可を受けて、弊社において一部表現を変更しています。

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診療報酬改定~在宅編~ 退院・在宅移行充実

厚生労働省は3月4日、2016年度診療報酬改定に係る告示を公布しました。4月1日からの適用となります。全体の改定率は▲0.84%で本体報酬は+0.49%、薬価▲1.22%です。

改定の基本方針に「地域包括ケアシステムの推進」を位置づけ、医療機能の分化・強化や必要に応じた介護サービスとの連携、複数の慢性疾患患者に対するかかりつけ機能、質の高い在宅医療・訪問看護の確保などを重点課題としました。

介護との連携を中心にみた改定のポイントは以下の5つです。

  • 認知症のかかりつけ医機能を強化
  • 介護と情報共有した退院支援
  • 訪問診療を重症度・居住場所等で細分化
  • 機能強化型訪看の要件緩和
  • 介護保険への円滑なリハ移行へ 一部併給も

※介護との連携を中心にみた改定のポイントの詳細は、文末に掲載しています。ぜひご覧ください。

白鷗大学川瀬教授はこのニュースをこう見る!

社会保障における介護保険負担分の抑制策として国が打ち出した第一弾具体策です。財務省は介護保険の財政負担を現状の経済・税収の状況下では10兆円までとしているところから、医療保険との連携強化(診療報酬の引き上げ)によって、一向に進まぬ地域包括ケアの推進を目指しています。

そうすると、医療保険財政の悪化につながりますが、これは平成30年度を目途として、医療保険と介護保険の合併によって解決出来ると考えていると推測されます。これが、現実となれば、1)20歳からの「医療介護保険」(仮称)の保険料徴収が可能となる、2)合併された財源の配分は国の方針によることになり、施策の幅と自由さが増し、使い勝手が良くなることとなります。

また、訪問診療を重症度・居住場所等で細分化、認知症のかかりつけ医機能を強化から予想されることは、低所得者、生活問題(独居、認知症等)を特別養護老人ホームへ、それ以外の一般利用者は、特定施設、特に低額の介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅へと入所型のサービス移行の主流になると言うことです。従来、医療との連携が脆弱であった低額の介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の利用者拡大を図ることによって、結果として、介護保険施設入所希望者をこちらに誘導しようとの意図が感じられるからです。

白鷗大学教育学部 川瀬善美教授

Mr.kawase S

【プロフィール】専門分野は「社会福祉」。川瀬教授は、福祉を愛と奉仕の世界だけでなく、産業・ビジネスの視点から捉えていくべきと、早くから提唱してこられました。北欧、イギリス、ドイツの介護事情や、米国・豪州・韓国の介護ビジネスにも精通し、大学で教鞭を執られるかたわら、全国各地の高齢者施設・病院経営の経営コンサルタントとしても活躍中。理論面だけでなく、介護施設現場の実情も熟知されています。

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